新時代を担う日中友好の架け橋に

第6回「日中友好岸関子賞」授賞式を終えて

 「日中友好岸関子賞」では、中国の東北地方出身の人文社会学系修士課程留学生の修士論文を対象に選考を行い、優秀なものに賞状と副賞(奨励金)を授与しています。今回は第6回の選考となり、寄せられた多数の論文の中から11月24日に行われた最終選考会において、以下2点の論文の受賞が決定しました。                                                           

最終選考会(2018年11月24日)

左より受賞者の盧超さん、李潤澤さん

 

 優秀賞(副賞20万円)

・李潤澤 遼寧省出身

(大阪大学大学院言語文化研究科)

「李香蘭『神話』と日本的オリエンタリズム―満映時代を中心に―」

 本論文はサイード(Said, E.)のオリエンタリズム論を踏まえながら、李香蘭が戦時中に出演した四つの作品――『支那の夜』(1940)、『迎春花』(1940)、『サヨンの鐘』(1943)、『私の鶯』(1940)――を分析し、「日本型オリエンタリズム」の独自性を探った。

 その特徴として、「理想の他者」と「現実の他者」が同時に存在し、そこには、日中の文化の歴史、日本の「大東亜共栄圏」戦略の「理想と現実」、さらに東アジアと欧米帝国主義との関係などが複雑にからみあっていることを指摘する。この研究は、日本と中国の社会と文化における歴史的相互作用に新たな光をあてる糸口となりうるものである。

 

・盧超 黒竜江省出身

(早稲田大学大学院文学研究科)

「安西楡林窟第三五窟のいわゆる「普賢変」について」

 本論文は甘粛省敦煌市の近郊にある仏教遺跡、安西楡林窟第三十五窟内の騎象普賢菩薩像の図像要素を整理・分析し、いわゆる「普賢変」が従来の固定された騎象普賢とは異なり、独自の性格を持つ作品であることを論じた。また「普賢変」という呼称の妥当性についても論究し、「文殊変」との比較をおこなった。安西楡林窟第三十五窟の「普賢変」に関しては、この研究が嚆矢といえる。

 

  また2019年1月12日には、日中友好会館会長室にて表彰式を行いました。

式では、西原春夫審査委員長より受賞者の二人に賞状と副賞(奨励金)20万円が授与されたのち、日中友好会館荒井克之理事長よりお祝いの言葉をちょうだいしました。また中国大使館教育処より、胡志平公使参事官と安載鶴一等書記官にもご臨席たまわり、胡公使からお祝いの言葉をちょうだいしました。

 表彰式後に行われた祝賀会では、和やかな雰囲気のなか、受賞者から中国東北地方の話をうかがったり、選考委員会や大使館の先生方から研究についてのアドバイスをいただいたりしました。お二人のますますのご活躍が期待されます。

 李潤澤さん感想…「このたび、受賞させていただき、また素晴らしい宴会を開いてくださり、誠に光栄に存じます。西原先生をはじめ各位の学術界の大家先生たちより貴重なご意見をいただき、私のささやかな研究キャリアにおいて非常に大切な機会となりました。今後とも、『姥姥』岸関子様の志であり、自分の来日の初心でもある日中の間の本当の相互理解のため、引き続き頑張っていきたいと思います。」

 盧超さん感想…「この度は第6回日中友好岸関子賞優秀賞に選んでいただき、誠にありがとうございました。お忙しい中、時間を割いてくださった査読者の皆様には心より御礼申し上げます。敦煌美術研究の奥深さ、及び敦煌壁画の美しさが少しでも伝われば幸いです。既に一般企業で働いている私は、応募時はとても不安でしたが、このような賞をいただき大変光栄に思います。今後も今回の受賞を励みに仕事と勉強を頑張ります。」

受賞者(前列左2、4)と選考委員メンバー
中国大使館 胡志平公使参事官(左1)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 当会館では今後も引き続き、中国からの留学生を支援する事業を進めていきたいと考えております。

(日中友好岸関子賞事務局)