新時代を担う日中友好の架け橋に

第7回「日中友好岸関子賞」授賞式を終えて

 「日中友好岸関子賞」では、中国東北地方出身の人文・社会科学系修士課程留学生の修士論文より、優れた研究に賞状と副賞(奨励金)を授与しています。第7回を迎えた今回は、以下の3名が入賞となりました。

 

最優秀賞(副賞20万円)

関日昇 黒竜江省出身(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科)

「国家、豪紳と匪賊―北満農村政治秩序の変容に関する研究」

 関さんの論文は、北満地域の村落社会の権力構造が国家権力との相互作用のもとで変容していく過程を、1910年代から戦後内戦期までの長期にわたって、文献資料と実地調査を結合させつつ詳細に分析した。とくに「満洲国」期に関する考察は、地域社会の自律的文脈と植民地権力との相関関係を描き出した秀逸なものであり、最優秀賞にふさわしい。

 

奨励賞(副賞10万円2点)

金雪梅 遼寧省出身(東京外国語大学大学院総合国際学研究院)

「尹東柱の詩における故郷―地理、民族、理想の視点から考察する」

 金さんの論文は、日本統治下の北間島出身の朝鮮人詩人、尹東柱を取り上げ、これまで主に「故郷の喪失」という視点から読まれてきた彼の作品を、身体的な記憶と政治的な想像、そして宗教的な救済への希求が結びついた「故郷の再構築」という視点から捉えなおした。帝国日本における朝鮮人知識人の思想形成の深層に迫る、優れた論考である。

 

孫安祺 遼寧省出身(東京大学大学院総合文化研究科)

「陳舜臣初期作品研究―『枯草の根』、『怒りの菩薩』、「青玉獅子香炉」を中心に―」

 孫さんの論文では「陳舜臣」の初期作品より三点を取り上げ、歴史的背景を照らし合わせながら、新しい解釈を試みた。1960~70年代から推理小説家として名を知られるようになった陳舜臣だが、孫さんの論文は作品分析にとどまらず、作家性の高さを明らかにした研究として評価された。

 

 第7回は例年に比べ多くの応募があり、また力作ぞろいでした。そのため、2019年12月7日に行われた最終選考会では、選考委員の間で活発な意見交換がなされました。

 

最終選考会(2019年12月7日)

左より受賞者の関日昇さん、金雪梅さん、孫安祺さん

 

 また2019年1月11日には、日中友好会館会長室にて授賞式を行いました。式では、選考委員会の西原審査委員長より受賞者3人に賞状と副賞(奨励金)が授与されたのち、日中友好会館荒井理事長がお祝いの言葉を述べました。表彰式後の祝賀会では和やかな雰囲気の中、選考委員会のメンバーとの交流を通じて、研究に対する助言や励ましをいただきました。

 受賞者感想…この度、名誉ある岸関子賞を受賞いただき、光栄に存じます。まず、日中友好会館の皆様と西原先生をはじめ、私の研究にご意見をくださった諸先生方に心よりお礼申し上げます。また、先生方との交流は私にとって、大変貴重なチャンスでございます。最後に、この度の受賞を機に、また新しい課題に挑戦し、自分の研究に一層励んでいきたいと思います(関日昇)。

 

第7回授賞式(2020年1月11日)
受賞者と選考委員会

 

 

 当会館では今後も引き続き、中国からの留学生を支援する事業を進めていきたいと考えております。

(日中友好岸関子賞事務局)