後楽寮での日々

李二維

 もう3年か。後楽寮に拾ってもらってからは。

 

 ちょうど3年前の今頃、三十路を迎えたばかりの私が今までの、いわば行き当たりばったりの人生に彷徨ったあげく、このこじんまりとした部屋に迷い込んだ。「よくこの歳で留学に挑んだね、勇気あるね」とか言われるが、実は現実逃避の臆病者に過ぎない。

 

 今度こそやり直すぞと思ったら、いきなりコロナ禍に巻き込まれてしまって、やっと居場所に辿り着いた、とほっとできたのも、ほんの一瞬しかなかった。そのまま、無駄に窓ガラスの上をぐるぐる回って外の世界に行こうとする蝿のように、どうしようもない焦りが続いていたのだ。

 

 このままではいけないと分かっていた。何しろ窓の正面にある木(私は勝手にその木のことをタイムキーパーと呼んでいる)が春、夏、秋、冬が往来しているのを黙々と教えてくれているのだ。タイムキーパーは身の置かれる境遇を顧みもせずにただただ芽を出し、葉をつけて、花を咲かせることに没頭しているのだ。

 

 自分のミッションを一つ一つ丁寧にこなしていくその佇まいから命の逞しさ、尊さが伝わる。その無言の励みに感動を受け、長年多くの留学生を送り出しているこの後楽寮ならではの力を借りて、自分の可能性を最大限に引き出していこうと踏ん張った。

 

 食堂でアルバイトしたり、寮生委員に立候補したり、春節祝賀会の司会を担当したり、コロナ禍に縛られながらオンライン日本語教室を開いたり等、貴重な思い出を重ねてきた。これからも常に感謝の気持ちで、後楽寮のおかげでチャレンジできたこと、出会った絆を糧にしてタイムキーパーのように何にも動じずに自分らしく生きていこうと思う。

 

(早稲田大学大学院文学研究科 日本語日本文学専攻)

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