新時代を担う日中友好の架け橋に

日中国交正常化50周年記念コラム 第14回(吉川英一)

日本と中国の国交が正常化されてから50周年となる本年、日中友好会館ではホームページとメールマガジンで「日中国交正常化50周年記念コラム」を連載いたします。

日中交流に長く携わった方や、日中友好会館の各事業に参加された幅広い世代の方に、日本と中国に関わりのある事柄、随筆、これまでの日中交流のエピソードや、これからの日本と中国に向けての期待・希望などメッセージを執筆いただき、一年にわたって連載します。また、日中民間交流の拠点として貢献する日中友好会館の取り組みなども合わせてご紹介します。

日本と中国のこれまでの歩みを振り返りながら、新しい友好関係の構築に向けたプラットフォーム作りの一助となれば幸いです。

 

冬の雨の日の出来事~上海のタクシー乗り場にて

公益財団法人日中友好会館 評議員 吉川英一

 

 日中に限らず国家間の友好関係の構築に於いて、市民レベルの交流は非常に重要です。

今回、私が入行した東京銀行の「国交正常化前の日中貿易・円元決済事始め」の逸話も考えましたが、敢えて妻のエピソードをお話します。

上海駐在時、既に熟年であった彼女は些細な事で足を骨折し、松葉杖を使う不自由な生活をしていました。ある冬の雨天日でした。外出が必要となりやむなくタクシー乗り場に行きましたが、長い行列で寒さもあって半ば絶望的な気分になったそうです。

すると前に並ぶ若い中国人男性が真剣な顔で振り返りました。傘が当たったと思い謝罪しようとすると、彼は「困っている様子だから俺の前に行け」と言いました。すると、その前の人も気付いて譲ってくれ、同じ行動が続いてあっという間に列の先頭迄来ました。最後に譲ってくれた女性が丁寧に傘や杖等の荷物を手伝いタクシーに乗せてくれました。ハリウッド映画の一場面の様でした。妻にとり最も嬉しく感激した思い出です。

私達には同様の経験が複数あります。中国の一般市民は自分たちが思う以上に心優しく、特に老人や障害者に親切です。帰国後、私達夫婦は中国人が困っていると恩返しのために声を掛けることにしています。そこから親密な友人関係に発展した例もあり、「更に日本が好きになった」という手紙を頂戴したこともあります。

日中関係は今後も様々な困難に直面するかもしれません。しかし、両国民の理解・信頼があれば未来は明るいと信じています。

(株式会社三菱UFJ銀行 顧問)

 

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