新時代を担う日中友好の架け橋に

「JENESYS2019」日本青年研究者訪中団

 日本青年研究者訪中団(団長:丸川知雄 東京大学社会科学研究所 教授)一行10名が、7月1日から7月7日の日程で訪中した。当財団は2010年より、中国の哲学・社会科学の最高機関である中国社会科学院の青年研究者代表団の招聘を行っており、本団の派遣はその相互交流の一環として、中国社会科学院日本研究所の招待により初めて実施した。

 本団は、日本の大学・研究機関等に所属する青年研究者で構成され、「中国の経済発展と日中協力」を交流テーマとして北京市、甘粛省蘭州市、武威市、嘉峪関市を訪問し、青年研究者及び関係者との交流や、地方の経済発展、福祉等の視察を行い、中国の最新事情や日中関係の現状について理解を深めた。

 

 北京市では受入機関である中国社会科学院日本研究所を訪問。中国側5名、日本側は8名の研究者が研究内容や成果について発表し、自由に質問を行った。双方とも経済、社会、文化などさまざまな内容で、参加者それぞれが自身の専門分野以外の観点から日中関係を考える機会となった。中国外交部と中国共産党中央対外連絡部では、中国側から最近の日中関係の現状や人的交流の重要性などが語られ、団員は踏み込んだ質問を投げかけ、忌憚のない意見交換を行うことができた。また、高齢者総合福祉施設の燕達金色年華養護健康センターでは、医療、看護、リハビリ施設のほか、住居スペースや文化施設を視察。医療レベルの高さや規模の大きさ、サービス内容の豊富さに驚くとともに、生き生きと過ごす居住者との交流を楽しんだ。

 

内陸部の経済建設や砂漠化防止を理解

 地方訪問は「一帯一路」のルート上で注目される甘粛省を訪れた。甘粛省社会科学院では、甘粛省の砂漠化防止や、経済、シルクロードの国際協力プロジェクトなど、5つの分野の研究発表を聞いた後、活発な質疑応答がなされた。ほとんどの団員は初めて甘粛省を訪れ、中国内陸部の経済状況や文化保護、対外文化交流など、地方の視点から中国を知る有意義な時間となった。武威市民勤県では、甘粛省が行っている砂漠化防止プロジェクトや脱貧困の取り組みについての現状を見聞するため、現代農業産業パーク、貯水池、防沙治沙記念館、防沙治沙モデルエリアを視察した。年間降水量が110ミリだという乾燥地域ならではの新しい農業スタイルや環境保全の方法など、新たな発見を得ることができた。嘉峪関市にある酒鋼集団訪問では、同集団が運営しているワイン工場と酒泉鉄鋼公司展覧館を視察した。自社栽培の葡萄を使って生産しているワインの工場内や、アジア最大のワイン貯蔵室、酒鋼集団の主要事業である鉄鋼、アルミ、輸送業について説明を受けた。交流や視察を通し、全国で最も経済発展が遅れているという甘粛省の実状を多角的に理解することができた。

 

 このほか一行は、中国国家博物館と甘粛省内で黄河流域、嘉峪関関城、雷台を参観し、悠久の歴史やシルクロードの雰囲気を感じとることができた。団員からは、「中国が想像以上に成長を遂げていることを体感できた」「都市部と農村部の大きな経済格差を認識できたと同時に、これからどの分野で日中協力ができるか、改めて考えるきっかけとなった」「今回の経験で培った人脈を役立てるとともに、今後も連絡を取り続けたい」「移動は大変だったが、雄大な中国に触れることができた」「どの訪問先でも熱烈歓迎していただき感動した」といった感想が聞かれ、訪中を通して大きな成果を得られたことがうかがえた。

日程表  参加者の感想