新時代を担う日中友好の架け橋に

第9回日中友好岸関子賞が決定

 「日中友好岸関子賞」では、中国東北地方出身の人文・社会科学系修士課程留学生の修士論文を選考し、優れた研究論文に賞状と副賞(奨励金)を授与しています。第9回を迎えた今回はコロナ禍に見舞われたにもかかわらず、多数の応募をいただきました。2021年11月19日に行われた最終選考会を経て、以下3点の論文が受賞となりました。

 

優秀賞(副賞20万円1点)

権力 一橋大学大学院社会学研究科

  「アジア太平洋戦争期朝鮮総督府における満洲移民宣伝活動」

 本論文は日本による「満洲国」支配の一環としての朝鮮人の満洲移民を扱っている。既存の先行研究を基礎にしつつ、それに独自の調査結果を重ね、政策よりも宣伝活動がより重要な役割を果たしたことを明らかにした点を評価したい。詳細な分析から新たな知見を展開している点でも論文として水準が高く、「優秀賞」に値する。

 

奨励賞(副賞10万円2点)

孫静怡 東京工業大学大学院環境・社会理工学院

   「戴季陶の日本認識―その早期留学経歴を手掛かりに」

 戴季陶の来日前と留学中の活動を丁寧に調査し、いくつかの新事実を明らかにした点は評価できる。また、彼の日本認識について、「民族信仰」をキーコンセプトの一つととらえ、そこから分析を加えている点にオリジナリティを感じる。ただ、この研究が日本でおこなわれたにもかかわらず、日本における研究成果(たとえば嵯峨隆『戴季陶の対日観と中国革命』など)がほとんど利用されていないのは少し残念である。

 

彭暁雅 一橋大学大学院法学研究科

   「日中両国の対中ODA認識に関する研究」

 対中ODAのありかたを真正面から研究の対象とし、とくに中国の政策が国際世論と衝突したいくつかの事案について、それらの実態を分析した論文で、その意義は大きい。日中間の見解の対立点の分析に関しては、やや複眼的な視点に欠けるため、審査員の間でも意見の相違はあったが、多くの先行研究に依拠しつつも新たな史料を発掘して実相の解明に努力し、独自の分析結果を示している点では、特色を発揮した論文と言える。

 

最終選考会(2021年11月19日)での討議

まだまだ落ち着かない日々が続きますが、今回受賞した3名の皆さまには、引き続き充実した留学生活を送っていただきたいと思います。今後益々のご活躍を期待しています。

(日中友好岸関子賞事務局)