新時代を担う日中友好の架け橋に

日中国交正常化50周年記念コラム 第54回(横山さやか)

 日本と中国の国交が正常化されてから50周年となる本年、日中友好会館ではホームページとメールマガジンで「日中国交正常化50周年記念コラム」を連載いたします。

 日中交流に長く携わった方や、日中友好会館の各事業に参加された幅広い世代の方に、日本と中国に関わりのある事柄、随筆、これまでの日中交流のエピソードや、これからの日本と中国に向けての期待・希望などメッセージを執筆いただき、一年にわたって連載します。また、日中民間交流の拠点として貢献する日中友好会館の取り組みなども合わせてご紹介します。

 日本と中国のこれまでの歩みを振り返りながら、新しい友好関係の構築に向けたプラットフォーム作りの一助となれば幸いです。

 

日本と中国の共通感覚

日中学院本科1年 横山さやか

 

 私が数年前台湾に行った際、商店でよく目に入ったのはお菓子や飲料のパッケージの日本語である。日本食など、日本にゆかりのあるものならまだ理解し得るが、明らかに日本とは関係ないものにも日本語が添えられている。パッケージに書いてあってもおかしくない言葉、食品にはふさわしくない言葉、理解できない文字列など、見ていてとても興味深かった。パッケージに日本語が書かれているとどのような効果があるのか、どのように印象が変わるのか、日本人としてそれを客観的に見るのは難しいが、機会があればまわりの中国人に聞いてみたい。

 2000年以降に中国語に取り入れられた日本語は少なくない。红豆泥(hóngdòuní/本当に)、牙白(yábái/やばい)、卡哇伊(kǎwayì/かわいい)などの音訳の単語と、宅(zhái/オタク、引きこもり)、本命(běnmìng/本命)などの漢字をそのまま取り入れたものとがある。近代に入った頃に中国語に取り入れられた日本語は「科学」や「自由」など、西洋の文物や概念を漢語によって翻訳したものが目立ったが、それらの特徴としては、漢字の意味を重視するため発音は日本のものとは異なる。それに対し2000年以降になって作られたものは、漢字の意味は二の次で日本語の音を重視するものが多い。上に挙げたものの前者である。この要因は、現代に入りアニメやゲームなどのポップカルチャーがインターネットを通じて中国でも広まり、日本語を読むことより聴く機会が増えたためであると考える。そのため、特に日本のポップカルチャーを好む若者から生み出されている。

 では日本で取り入れられている中国語はあるだろうか。中国語から日本語に取り入れられたものは料理名などが多く、大きな影響は与えていないように思われる。それ以外で一つ取り上げるとすれば「偽中国語」だろうか。2010年代以降、日本人の間で日本語の助詞など平仮名、片仮名を排除し、漢字のみで文を書くという現象がネット上で見られている。「笑過腹痛」、「我家之犬本当可愛」、「最近毎日在宅勤務為非常運動不足」など、日本人でも中国人でも理解し得るものとなっている。これは中国でも話題になっており、いくつかのメディアでも取り上げられている。

 このような2言語間の交流は、やはり漢字文化圏であるということが大きいのではないかと思う。日本と中国には漢字を通じた共通感覚があるのは明らかだ。そして、近年生み出されている新しい言葉はインターネットの影響を大きく受けていると言えるだろう。これからもインターネットの発展にともない、日本語と中国語の友好は深まることが期待される。私もインターネット社会を生きる日本語母語話者、中国語学習者としてこの動向に注目したい。

 

【日中国交正常化50周年記念コラム アーカイブ】