新時代を担う日中友好の架け橋に

日中国交正常化50周年記念コラム 第55回(莫邦富)

 日本と中国の国交が正常化されてから50周年となる本年、日中友好会館ではホームページとメールマガジンで「日中国交正常化50周年記念コラム」を連載いたします。

 日中交流に長く携わった方や、日中友好会館の各事業に参加された幅広い世代の方に、日本と中国に関わりのある事柄、随筆、これまでの日中交流のエピソードや、これからの日本と中国に向けての期待・希望などメッセージを執筆いただき、一年にわたって連載します。また、日中民間交流の拠点として貢献する日中友好会館の取り組みなども合わせてご紹介します。

 日本と中国のこれまでの歩みを振り返りながら、新しい友好関係の構築に向けたプラットフォーム作りの一助となれば幸いです。

 

「子どもに友好の未来を!」静岡県市民が手弁当で始めた写真展

作家・経済ジャーナリスト  莫 邦富

 

 7月1日、静岡県掛川市。JR掛川駅の南口の差し向かいにある掛川グランドホテル3階の会場で、日中国交正常化50周年を祝う特別記念講演が行われた。講師は田中角栄元首相の娘さんで元外務大臣でもある田中真紀子さんだった。

 会場は聴講者で埋まっていた。主催は松本亀次郎記念日中友好国際交流の会だ。同会の名誉会長で、元東京学芸大学学長でもある鷲山恭彦氏は興奮した表情で盛況ぶりを紹介してくれた。

 「入場者をもともと定員350名にしていたが、申込者が600名近くに達したのを見て、450名に引き上げた。それでも席は足りなかった」
田中真紀子さんの人気の高さを確認できた一方、日中関係に対する人々の関心ぶりも印象に残った。

 今年に入ってから、鷲山氏は「静岡県日中青少年写真展実行委員会委員長」という新しい肩書を増やした。これは渥美泰一・元静岡県議会議長、花嶋玲恵、安間孝明ら有識者と一緒に発起人になって始めた日中国交正常化50周年記念事業だ。日中関係が厳しさを増してきたのを見た彼らは、行動を起こさなければという危機感を覚え、手弁当で始めたイベントだ。

 最初は、世界の子どもをずっと撮影してきた写真家岡本央氏の協力を得て浜松市内のどこかで写真展を開催しようという単純な発想でスタートした。しかしその後、静岡県日中友好協会などの団体の支援も受けて、会場は静岡県内4カ所へと広がった。やがて京都、北海道、北九州などでも開催する運びになった。さらに、中国瀋陽市は6月の時点で同写真展を一足先に開催した。西安市も開催の意向を伝えてきた。

 写真展の内容にも大きな変化が起きた。今やカーニバルのように華やかかつ賑やかなイベントへと変貌し、他の多くのイベントが同時進行するようになった。

 開催されたイベントには、松本亀次郎と周恩来首相との師弟関係を振り返る講演会もあれば、日中間に国交がない時代に約1,000人の残留日本人戦犯の帰国に尽力した中国人女性李徳全の功績を語るセミナーもある。私は8月27日にクリエート浜松2階ホールで行われた松本亀次郎と李徳全に学ぶ「講演・シンポジウム」に講師として登壇し、これからの日中友好交流の在り方について提言を行った。

 さらに、子どもに大人気のドローンを飛ばす企画、高齢者と医食同源との関係を語る講座、歌と踊りのパーフォーマンスなども組み込まれている。なかには参加者がみずから50周年を祝う歌の作詞、作曲をしたグループもある。「堅苦しい説教はなく、楽しみいっぱいのイベントに持っていきたい」。これは写真展実行委員会のメンバーたちの共通した意志だ。

 今回の記念事業は延べ1,700人余の来場者を迎え、盛会裏に全日程を終了した。

 草の根の文化交流こそ豊かな友好の明日をひらく――。新時代の日中友好が育っている。

 

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