新時代を担う日中友好の架け橋に

第10回 日中友好岸関子賞が決定

「日中友好岸関子賞」では、中国東北地方出身の人文・社会科学系修士課程留学生の修士論文を選考し、優れた研究論文に賞状と副賞(奨励金)を授与しています。第10回を迎えた今回は昨年に続きコロナ禍にありましたが、多数の応募をいただきました。2022年11月19日に行われた最終選考会を経て、以下3点の論文が受賞となりました。

 

最優秀賞(副賞30万円)

文可依 吉林省出身 東京大学大学院総合文化研究科

「フェミニズムに対する想像を開く:中国のフェミニズム行動派の運動におけるフェミニズムの政治と性的マイノリティ」

本論文は、現代中国における「行動派フェミニズム」、パフォーマンス・アートの分析を通じて、現代中国のフェミニズム運動におけるインターセクショナリティ(人種、性別、階級、性的指向、性自認など複数の個人のアイデンティティが組み合わさることによって起こる様々な差別の現状を理解する枠組み)のあり方を論じるものである。中国における社会運動・市民運動についての研究は世界的に見ても盛んになってきてはいるが、これをアートという表現手段との関わりから考察した先行研究はなく、社会主義国である中国でこのような先駆的な研究がなされたことに驚きを隠せない。中国のみならず人類全体の問題を指摘した点も含め、最優秀賞に値すると評価した。

 

優秀賞(副賞20万円)

李紀源 遼寧省出身 早稲田大学大学院日本語教育研究科

「ソーシャルネットワーキングサービスを用いた日本語教師間の学び合いコミュニティの可能性と評価―Facebookを利用した実践から―」

本論文は、日本語教師を取り巻く課題の一つである「学び合いの場」について、実践的な分析を行ったものである。成長を望む日本語教師はSNS上に作られたコミュニティから情報を収集し、実際の授業に生かしている。李氏は自らの経験も踏まえ、教育現場に資する実践モデルを提示した。研究の独自性と努力への評価を込めて優秀賞の授与が適当である。

 

優秀賞(副賞20万円)

岳美汐 遼寧省出身 東京外国語大学大学院世界言語社会学研究科

「清末民初の中国における「学堂楽歌」と唱歌教育―沈心工の音楽を中心に―」

本論文は、近代中国が「学校唱歌教育」を普及させた歴史を追求する中で日本留学中にその思想と方法を日本人から学んだ沈心工の生涯、活動、作曲を詳細に紹介した点で、高い水準を誇る論文であった。先行研究や一次資料を使用して独自の見解を提示している点にも注目される。従来の歴史研究に新たな一頁を加えた論文として優秀賞に値すると評価した。

 

日本と中国の学術交流に貢献する人材育成のため、これまで多くの留学生を支援してまいりました日中友好岸関子賞は、第10回選考を持ちまして終了いたします。

今回受賞した3名の皆さまには、今後益々のご活躍を期待しています。

(日中友好岸関子賞事務局)

 

最終選考会(2022年11月19日)での討議

会場とオンラインで実施