新時代を担う日中友好の架け橋に

日中青少年交流事業 参加者のその後のストーリー(第15回)

 日中青少年交流事業の過去の参加者の方に、それぞれの「その後」のストーリーをうかがう当企画。

 今回は、2008年(高校2年時)、2008日本青少年訪中代表団(四川コース)に参加し、現在は二胡の演奏家として活躍する桐子(きりこ)さんのインタビューを紹介します。

桐子さん プロフィール

品川エトワール女子高等学校に在学中の2008年(高校2年時)、2008日本青少年訪中代表団(四川コース)に参加。6歳より二胡を学び始め、12歳より演奏活動を開始。早稲田大学在学中、中国最難関の音楽大学である中央音楽学院へ留学。大学卒業後、演奏活動に専念。

 

 

二胡をきっかけに出会った中国。訪中団の経験から目標を明確にし、夢を叶える

― そもそも中国との出会いは?

桐子:二胡が最初のきっかけでした。もともと父が中国音楽が好きで、最初に父が二胡を習い始めたんです。それから母、私と習い始めました。音色よりも何よりも、私はただ両親と同じことをやりたくて。弾いてみたいなと。

 

― 初めて中国に行ったのは?

桐子:小学校6年生の時、北京の国際コンクールに参加するためです。 高校生で訪中団に参加するまで、旅行で中国へ、ということはなく、ひたすらコンクールのために往復していました。だから私にとって、初めてちゃんと中国を旅行できたのが訪中団だったんです。

 

― 桐子さんが訪中団に参加された2008年は「日中青少年友好交流年」。その最初の代表団ということで、北京で盛大な開幕式が開催されました。その開幕式で二胡の演奏をされたそうですね。

桐子:開幕式のリハーサルのために先に会場入りして、みんなと万里の長城を参観できなかったのを覚えています。演奏活動は中学校の時から始めていたのですが、今ほどは慣れておらず、緊張しました。胡錦濤国家主席(当時)が参加されると聞いていたし。共演した張濱(チャン・ビン)さんとも、この時に初めてお会いしました。張濱さんはプロの二胡奏者で、白の上下のチャイナスーツ、私は訪中団のユニフォームであるグリーンのポロシャツに制服のスカートで演奏しました。

 

 ―この開幕式で最も印象に残っているのは?

『明天会更好(よりよい明日へ)』という曲を教わって、参加者全員で大合唱したことです。すごい熱量で「中国ってこんな感じなんだ!」と。それがすごく楽しかったです。

 

― 学校交流やホームビジットの思い出は?

桐子:学校交流では、大きな体育館のようなところで、二胡や馬頭琴など、民族楽器を弾いていたんです。そこで「あなたも二胡を弾くんだね」という感じで、いろいろ話しかけてくれ、日本人の私が中国の楽器をやっていることを面白がって、喜んでくれました。ホームビジットでは、その家の女の子が、かわいいプレゼントをたくさん用意してくれていて、「これが今、流行ってるんだよ」「これおいしいよ」と教えてくれました。

 

2本の弦を自在に操る桐子さん

― 訪中活動の最大の収穫は何でしたか?

桐子:現地の学校を訪問し、同年代の生徒たちと日常生活を一緒に体験できたことが強く印象に残っています。彼らは自分と同じように、楽しいこと、おいしいもの、かわいいものが好き。異なるのは言語だけで、思いやる気持ち、優しさも同じなのだと身をもって感じました。正しく知ることが「好き」に繋がるのだ、とも。「“親日親中”を呼びかける前に、“知日知中”の大切さを広めたい」という思いを強く抱くきっかけにもなりました。この思いは自分の中で今でも大事にしています。

 

― 訪中時に見聞きしたことはその後の方向性を決めるのに役立ちましたか?

桐子:まず、中国へ行きたい!と強く思いました。民族楽器をやっている子が中国にはたくさんいることが刺激になったし、中国語に関しては、通じ合えた時の喜び・感動もあれば、うまく表現できない悔しさもあって、帰ってからすごく勉強しました。高校卒業後、すぐにでも北京の中央音楽学院に進学したかったのですが、周囲の勧めもあり、早稲田大学へ進学しました。大学では専門的に中国語や中国文化を学び、中国系の授業をたくさん履修しました。大学1年時に学内の日中の交流イベントで、中国のプロの演奏家と共演する機会がありました。その方から「プロを目指すなら、中央音楽学院を出ていないと二胡奏者として認められない」と強く言われて。高校の時から、ずっと留学したいと思っていながら、心のどこかで半分あきらめていましたが、この時、「やっぱり行きたい!」と。留学では一年を通じ、いちばん憧れていた先生に教わることができました。その先生の指導を受けたことで、二胡を仕事にしたい、ちゃんと中国の人に認めてもらえるだけの技術がないといけない、と覚悟が決まったように思います。

 

―ここ最近は海外での演奏活動やいろいろなコラボレーションに積極的に取り組んでいらっしゃいますね。

アニメのコスプレで、海外の熱烈なファンと。

桐子:演奏活動が本格化したのは、bilibili(中国の動画共有サイト)やニコニコ動画に動画を載せ始めたのがきっかけです。いろいろ知ってもらえ、お声がけいただけるようになりました。そのあたりから上海、北京、台湾と中華圏に毎年呼んでいただいて。写真のライブでは、「桐子」と看板を持ってくれている子もいますが、集まってくれた子たちは、日本語が話せるんです。それがすごい驚きで!漫画や日本の文化が好きで、学校で学んだわけではなくて、アニメを観て、一生懸命字幕を見ながら・・・独学で。そうやって一生懸命に交流しようとしてくれる彼らと会えるのが、毎回とても楽しみです。

 

―この写真のライブのように、コスプレで演奏したり。ジャンルを問わず、いろいろ挑戦していますが、そこに至るまでのことを聞かせていただけますか。

桐子:高校生くらいまでは、コンクールに追われ、難易度の高い曲ばかり練習していましたが、ニコニコ動画がひとつの転機となったんです。アニメ『ラブライブ!』の登場人物、矢澤にこちゃんに扮して二胡(にこ)を弾く、という企画だったのですが、まず日本でバズって。さらに知らないうちに中国でも・・・誰かがbilibili動画に転載したものがヒットしていたんですよ。観てみると、みんなが面白がってくれていて。同時に「何やってんの?どうしちゃったの?」とか「それはどうかと思う」という意見もありました。当時、私の周りにはコスプレで二胡を弾くような人は全然いなかったので。その時、とても尊敬している方の「いちばん好きなものは二番手に置いておく」という言葉で意思を固めることができました。まずは「たくさんの人に知ってもらえるよう、みんなに受けるものを勇気をもってやってみよう」と。それで日本で人気のアニメやヒット曲を積極的にカバーするようになりました。「いろいろな意見があるだろうな」と最初はドキドキしました。でも「必ず最後は、自分の本当に好きなものを自由に表現できるんだ」と鼓舞して。そうしたら今、その段階に来られたんです。ずっと抱いていた伝統曲を大切にする思い、「アニメだけじゃないんだよ」という思いを語ったり、そういう演奏をしたり。今がいちばん自分らしい活動ができているかな、と思っています。

 

―この先、計画していることや将来の目標はありますか?

レッスンの様子。教室にも桐子さんの「好き」があふれる

桐子:今まで「自分は二胡しかできない」と、どこか決めつけているところがあったのですが、お話しすることも大好きで。演奏には言葉がありませんから、演奏と語りで、自分がこれまで経験してきたリアルなエピソードを交えつつ、楽しんでもらえるような活動ができたら、という思いがあります。中国のことをはじめ、自分の「好き」を伝えて、それをいいと思ってもらえたり、その人もそれにハマったり。ひいては、その人の生活がより豊かになるような、そういうきっかけになりたいです。二胡講師としても活動しています。日本における二胡の認知度や二胡学習者のレベル向上に貢献できるよう、ここでも「正しい情報を自分の言葉や行動でしっかりと相手に伝える」ことを大切にし、守るべき伝統も、新たな可能性も、たくさんの人に知っていただきたいと思っています。

 

― 最後に、日中青少年へのメッセージをお願いします。

桐子:チャイボーグや中華ロリータ、タピオカミルクティーやいちご飴にマーラータンなど、中国発のものが日常的にじわじわと話題になっています。中国には、日本人の私たちが夢中になれる、魅力あるものがたくさんあります。どんなことでも気になったら、まず調べ、経験してみてほしいです!文化の違いを感じたとしても、それを知識として身につけ、受け入れるということは、広い心を持つことにもつながります。異文化に触れることで、自分自身が成長できる喜びを感じていただけたら、うれしいです。