新時代を担う日中友好の架け橋に

「JENESYS2023」2023年中国法曹関係者代表団(1)

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実施概要

招聘期間: 2023年9月24日(日)~ 9月30日(土) 6泊7日間

招聘人数: 15名(団長、副団長、団員13名)

実施団体: (公財)日中友好会館

派遣団体: 北京市安理律師事務所

派遣協力: 在中国日本国大使館

内  容:

・日本の「法」についてのブリーフ、交流、視察

・訪日テーマ「これからの日中協力と法律家の役割」に関する交流、視察

・日本に対する包括的理解促進につながるプログラム等

主な日程

9月24日(日)

PM 来日

 

9月25日(月)

AM フォーラム21 懇談・交流

PM 法務省 ブリーフ、法務大臣 表敬訪問

       最高裁判所 視察

       歓迎会

 

9月26日(火)

AM 国会議員 表敬訪問

       外務省 訪問・交流

PM 日本弁護士連合会 訪問・交流

       女性国会議員 訪問・交流

 

9月27日(水)

AM 女性の社会参画・活躍を考える交流

PM 京都へ移動

 

9月28日(木)

AM オムロン株式会社 訪問・視察

PM 稲盛ライブラリー 視察

       和歌山へ移動

 

9月29日(金)

AM 高野山真言宗 総本山金剛峯寺 視察・交流

PM 東京へ移動

       歓送報告会

 

9月30日(土)

AM 帰国

 

プログラムのハイライト

本事業は、多国籍企業等のビジネス案件を担当する中国国内の若手弁護士を訪日招聘し、「これからの日中協力と法律家の役割」をテーマに、司法機関や法律関係組織の訪問をはじめ、中央省庁、日本企業等の視察・交流を行うことで、日本社会の発展と日中関係の 動向を俯瞰するとともに、日中協力において法律家が果たすべき役割を考察することを目的として実施しました。

 

「弁護士自治」と「司法権の独立」に大きな関心を寄せる

日程の前半は、法務省、最高裁判所、日本弁護士連合会と法律分野のプログラムが続きました。日本の法制度に初めて触れる若い団員にとって、世代の近い法曹有資格者から受ける説明やプレゼンテーションは分かりやすく、さまざまな視点から質問が挙がりました。その上で、団長のリードで話題の中心は中国にはない「弁護士自治」と「司法権の独立」に移行し、各々のプログラムで熱心に意見が交わされました。団長は日本での留学・実務経験があり、現在も多くの日本の案件に携わっていることから、若い団員には日本の関係者を交えた場でこのテーマへの理解を深めてほしい、という強い思いがうかがえました。

 

女性の活躍・社会参画について、日本の実情を通じ、多面的に考える

本代表団は、作為的に女性を募集したのではなく、優秀な青年弁護士を選抜した結果、おのずと9割が女性だったというユニークな特性を持っていました。異業種交流グループであるフォーラム21との懇談・交流では、「女性の活躍」と「少子化」を中心にグループディスカッションを行いましたが、日本を代表する企業の精鋭メンバーは8割が男性と対照的な構成でした。プログラムの冒頭、団長がそう指摘すると、その背景を探るように両国の違いを意見交換し、大局的な違いの一方で多くの共感点を見いだすなど、活発な議論が交わされました。女性国会議員の訪問・交流は小渕優子衆議院議員を、女性の活躍・社会参画を考える交流は社会学者の上野千鶴子東京大学名誉教授を訪ねました。小渕議員は、自身の経験と展望を重ね、女性であること=障壁という観念にとらわれるのではなく「女性だからこそ気づき、共感できることを強みにすべき」と激励してくださいました。上野先生は団員の質問を聞きながら、ときに専門用語や概念を板書するなど、質問の本質を鋭く見極め、整理するように対話、回答されるのが印象的でした。男女の関係・相違にとどまらず、親子関係や社会構造など広い視野から物事を捉えるヒント、中国ではあまり自覚されていない発想やものの見方について示唆を与えてくださいました。団長含む2名の男性も、女性の発言を咀嚼しながら「男性としてできること」を真剣に考え、積極的に意見を述べました。

 

 老舗企業と高野山を訪ね、“人と社会に尽くす”精神の体現に感嘆

後半の地方日程では、オムロン株式会社と京セラ株式会社の稲盛ライブラリーを訪問しました。両社とも、老舗企業にして革新を続ける根底には、理念に掲げる社会貢献と従業員や顧客に真摯に向き合う姿勢があり、それを忠実に事業に昇華していることに、団員一同強く感銘を受けました。高野山でも、高名な住職の分かりやすい講話や温かなおもてなしに触れ、日本に息づく人と社会に尽くす精神の重みについて理解を深めました。

 

参加者の感想

◆1. 弁護士の自治は、中国と日本の弁護士制度の最大の違いであり、非常に収穫がありました。-法務省、日弁連との交流より。2.日本の女性育成は、母親の育成であり、社会的リーダーの育成ではありません。日本の女性は変わってきているが、男性や社会は変わっていません。これは日本と中国が共に直面している問題です。3.細野議員と小渕議員は大変優秀な政治家であり,将来の日本のリーダーの魅力を感じました。4.オムロンと京セラの社会的責任に感服しました。特に、家族企業がいかにして社会的企業になり、世代から世代へと受け継がれていくかという点について大いに啓発されました。5.ALPS処理水問題については、互いに理解を深めました。6.最高裁判所の独立性と公平性が各方面から認められていることは意外で驚きました。7. 日中関係に関する外務省の交流は率直かつ誠実なものでした。8.高野山の宿坊は新しい体験でした。飛鷹全隆住職の優しさが印象的でした。9.フォーム21の交流は多数の方々にご参加いただき、とても感謝しています。時間が短かかったのが残念でした。

 

◆第一に、日本の弁護士は日本弁護士連合会直轄であり、自治権を維持しています。法務省は弁護士を管理しておらず、弁護士の年次審査はなく、日本弁護士連合会は大きな権限を持ち、除名等、弁護士を直接処罰することができます。第二に、日本の裁判は三審制であり、公判の時間制限はありません。一案件は数年、あるいはそれ以上の期間で終結しない可能性があり、同様の事件で異なる判決意見がある場合には、最高裁判所が最終判決を下します。第三に、現在、男女の未婚率や離婚率が高く、中間層・管理職の女性の割合が低いことは、フォーラム21の参加者からも見て取れました。もちろん日本も改善しようとしています。第四に、訪問した日本企業のオムロンや京セラは、日本企業や起業家が社会的責任感を持ち、従業員の利益を第一に考えていることを深く実感させてくれました。

 

◆短くも収穫の多い旅でした。忘れられないことが3つありました。1つ目は、ここで出会った人たちです。手配してくださったすべての行程で、私たちはとても優秀な人々と出会うことができました。彼らとの交流を通じ、私たちはエリートの力量を感じ、「上には上がある」と啓発されました。2つ目は、ここで忘れられない多様な視点をたくさん学んだことです。今回日本に、少子化や女性の問題等たくさんの問いを持ってきましたが、交流を通じ、問いに対する新たな視点を発見し、この世界は白でなければ黒というわけではなく、もっと色とりどりでいいことに気づきました。ヴォルテールが「私はあなたの意見には同意しないが、あなたが発言する権利を命をかけて守る」と言ったように、私たちはさまざまな声が存在することを認めなければなりません。3つ目に、ここで鑑賞した風景、仏教の聖地である高野山も、新幹線の車窓から眺めた富士山も、決して忘れません。現代的な東京にも、古式ゆかしき京都にも、中国と似た場所もあれば異なる風景もありました。

 

◆法律の専門家として:1)日本と中国はどちらも大陸法系の国ですが、裁判官制度と弁護士制度には明らかな違いがあります。例えば、日本の裁判官は定期的に異動しますが、中国の裁判官は通常異動しません。 また、日本の法曹は、司法試験に合格した後、1年間の司法インターンシップ研修を受け、弁護士になるか裁判官、検察官になるかを選びます。中国では最初に職業を選択し、続く訓練方法と機関は職業によって異なります。個人的には、両国の間には政治的体質や経済発展の面で明らかな違いがあることが大きな理由だと思います。2)日本の弁護士・法律事務所は、中国の法律事務所・弁護士に比べ、ブランドプロモーションへの投資が少なく、クライアントは古い人からの紹介や口コミに依存しています。3)日本の法教育は、若者の法意識の育成に重点を置いており、小学校から高校までの法教育体系があります。

初来日者として:1)日本人の礼儀正しさと環境衛生は、これまでにさまざまな情報源から入手した情報と一致しており、よい旅行体験でした。2)上野千鶴子先生は女性問題にについて造詣が深く、質問に的確に答えてくださいました。先生は率先して女性の社会的地位の向上を推進すると同時に、専門的な知識に基づいて女性を支援してほしいとおっしゃいました。先生の社会的責任感に敬意を表し、自身も先生の希望に応えられるよう、専門的な知識を活かしてより多くの女性を救えるよう努力していきたいです。