新時代を担う日中友好の架け橋に

「JENESYS」中国社会科学院青年研究者代表団

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実施概要

招聘期間: 2024年1月14日(日)~1月20日(土) 6泊7日

招聘人数: 10名(団長、秘書長、団員8名)

実施団体: (公財)日中友好会館

派遣団体: 中国社会科学院

内 容 :

 ・訪日テーマ「日本のコミュニティ・ガバナンスにおける経験と啓発」に関するセミナー

 ・新しい時代に向けたまちづくりを展開する地域・各種団体視察・交流

 ・日本に対する包括的理解促進につながるプログラム等

 

主な日程

1月14日(日)

 PM 来日

          皇居・東京タワー 参観

1月15日(月)

  AM テーマに関するセミナー受講、おやまちプロジェクト 視察・交流

  PM 浅草寺・旧安田庭園 参観

      歓迎会

1月16日(火)

  AM 杉並区教育委員会 訪問・交流

  PM 福岡県へ移動

1月17日(水)

  AM さとづくり48 視察・交流

  PM 農家民泊体験(佐賀県唐津市・玄海町)

1月18日(木)

  AM 農家民泊体験(佐賀県唐津市・玄海町)

  PM 津屋崎ブランチ 視察・交流

1月19日(金)

  AM 北九州市保健福祉局 訪問・交流

  PM 東京都へ移動

   歓送報告会

1月20日(土)

  AM 帰国

 

プログラムのハイライト

本事業は、中国の哲学・社会科学の最高機関である中国社会科学院に所属する有望な若手研究者を訪日招聘し、「日本のコミュニティ・ガバナンスにおける経験と啓発」をテーマに、有識者によるセミナー、新しい時代に向けたまちづくりを展開している地域・各種団体の視察・交流を通じ、同分野における日本の実情と展望について理解を深めるほか、日本に対する包括的な理解を促進することを目的として実施しました。

 

商店街の民家でセミナー

代表団一行は、まず東京都市大学の坂倉杏介教授が新しいまちづくりを実践する世田谷区尾山台地域を訪ね、三代にわたり職住一体で洋品店を営んできた商店街の民家で講義を受けました。ここはリノベーションし、現在は店舗兼まちづくりの拠点として機能しています。家族が暮らした面影を残した空間で講義を受けた後、商店街を視察することもできました。

 

自分の足で地域をめぐり、まちの様子や人々の思いに触れる

福岡県でも、ボトムアップでまちづくりに取り組む2つの民間プロジェクトを訪問しました。

宗像市では日の里団地の「さとづくり48」を訪問。新たにまち開きをした戸建住宅エリア、解体予定の団地棟をリノベーションした生活利便施設「ひのさと48」でコミュニティカフェなどを見学し、団地再生の取り組みについて学びました。

福津市では旧津屋崎町の「津屋崎ブランチ」を訪問。一軒家を利用した事務所でテーブルを囲み、概要説明を受け、討論しました。その後の地域見学ツアーでは、住民との対話機会にも恵まれ、午後いっぱい、時間をかけて視察したことで、「人とのつながり」「自然との共生」といった実践の根底にある思いや価値観についても理解を深めることができました。

佐賀県唐津市・玄海町地域の農家民泊でも、手作りの郷土料理を味わうなど、受け入れ家族の心のこもったおもてなしを受け、日本人の一般的な家庭の生活を体験することができました。

 

行政では、コミュニティ・スクールと地域包括ケアについて学ぶ

また、行政主導の先進的な取り組みについても視察しました。

杉並区教育委員会では、少子化による学校の統廃合、地域間格差など、コミュニティ・スクールの背景にある課題についても学び、北九州市では、地域包括ケアのブリーフを受講後、市民センターを視察し、ボランティアなど高齢者支援活動の現場の実際についても理解を深めました。

参加者の感想

◆第一に、コミュニティガバナンスには多くの側面があり、それらに体系的に対応する必要があり、具体的な作業でも細部に注意を払い、地域の人々の幸福の向上に焦点を当てる必要があります。

第二に、都市再生計画は体系的なプロジェクトであり、政策と資源の面で調整する必要があります。 日本におけるコミュニティ再生プロジェクトでは、多くのプロフェッショナルが関わっているのを目の当たりにしました。コミュニティ再生プロジェクトは、古民家の再生だけでなく、地域全体の活力を刺激するもので、さまざまな階層や年齢の人々の現実的なニーズを考慮する必要があります。

第三に、高齢化にどう対処するかは、日中両国が直面するべき問題であり、日本はこの点に関して多くの努力をしてきたので、参考にする価値があります。法律面では、介護保険法などの法律が成立し、制度面では、日本国内に支援センターがあり、さまざまな自治体やボランティアが重要な役割を担っています。中国には中国の国情があり、日本には日本の国情があります。日本は、高齢化対策を自国の国情に応じて策定してきました。高齢化対策は、完全に独立したものではなく、実は既存の対策や制度の多くと一体化しています。これは、日本の高齢化対策成功の鍵でもあります。

 

◆日本は国民自治の度合いが高い国であり、誰もがよりよい生活のために何かをしたい、または何かをしようとしており、比較的団結しています。そして、具体的な実務では、それに対応する運用の余地もあり、政府は指導的な役割だけで、あまり介入しませんが、物事の発展を一定程度促進するのに役立っています。

コミュニティ・ガバナンスの過程で、民間団体は多くの努力をしてきており、実際にその地域に住み、生活している人こそ自らの故郷を作り上げる方法を知っているのです。このようなモデルは最も効果的で、時間とコストを節約できるはずです。

交流の中で、語り手は皆、幸せな生活の追求、つまり人生をより便利で幸せなものにする方法を強調していました。これは、相対的に日本における近代化の度合いが高く、衣食住がもはや問題ではなく、人々のニーズが高いレベルにあることを反映しています。

 

◆今回の視察は、私たちにとって日本の生活のあらゆる側面を見て、日本を知り、日本を理解する絶好の機会でした。大学教授が研究プロジェクトを通じて地域活性化活動にどのように関わっているかを見ることができました。また、企業や個人がそれぞれの強みを活かしてふるさとづくりに参画している様子も目の当たりにしました。さらに、教育や社会福祉の分野で政府関係省庁がどのような対策を講じているかも学びました。今回の訪問で、地域住民同士の交流や参加の大切さを改めて理解することができました。また、幸運にも日本の家庭に滞在し、ホストファミリーの温かいおもてなしを受け、普通の日本人の家庭生活や、日本の田舎の生活の便利さとアクセスの良さを肌で感じることができました。

 

◆近代化は人々により多くの機会と自由をもたらしましたが、同時に人と人との間に疎外をもたらしました。1週間の調査を通して、私たちは、人々の間の疎外感を埋めようとする日本人コミュニティの努力を目の当たりにしました。これはその中のボトムアップ的なものです。東京の尾山台のコミュニティ協議会は大学が発起し、個人のネットワークを通じて地域でさまざまな活動を行っています。福岡県のさとづくり団体は、地域経済の活性化とサービス提供に資する地域公共空間を創出しています。福津市津屋崎の「未来の会議室」は、移住者を惹きつけ、小さな町の価値を創造し、衰退したコミュニティを活性化し、市民社会がネットワーク、空間、文化といったさまざまな次元でコミュニティを構築しています。トップダウンの取り組みも行っており、杉並区教育委員会はコミュニティスクールを建設し、「学校支援本部」を育成し、地域が教育過程に参加するためのプラットフォームと、誰もが幸せになれる教育システムを構築しています。これらは、全て日本のコミュニティ形成の貴重な経験です。日本のコミュニティ・ガバナンスの経験を学ぶとともに、近代化の危機に対するコミュニティの役割など、理論的な問題を再考するきっかけにもなりました。