好時光・二十四節気
九月二十三日 秋分

撮影:レーナ

秋分は、 太陽が真東から昇り、 真西へ沈む頃、 昼と夜の長さがほぼ等しくなる季節を示します。光と闇、 暑さと寒さが調和するこの節気は、 移ろいゆく季節の美しさを感じさせてくれます。

忙しい日々の歩みを少し緩め、澄み渡る空を見上げながら、実りへの感謝とこれから訪れる季節への期待を胸に抱く――。秋分は、自然と人とが静かに調和する、美しく奥深い秋の入り口といえるでしょう。


一方、中国や日本で親しまれている中秋の名月(十五夜)も、この頃にあたります。旧暦8月15日の夜に眺める満月を指すのですが、旧暦は、月の満ち欠けを基準としながら季節とのずれを調整するため、毎年9月中旬から10月上旬頃になります。今年の中秋節は9月25日になります。

日本では、収穫への感謝と豊作への願いを込めて、満月に見立てた丸い団子やすすきを供えて満月を鑑賞する 「お月見」 の風習がありますが、 中国では家族が集まり、 満月を眺めながら「月餅」を味わい、団らんのひとときを過ごします。日本の「お盆」が帰省シーズンであるように、  現代の中国では 「中秋節」 がその役割を担っており、 いまや春節に次いで家族が集まる大切なビッグイベントです。

中国で、中秋節に欠かせない食べ物が「月餅」です。丸い形が満月や家族円満を象徴する焼菓子で、 親族や友人へ贈る縁起のよいものとして親しまれています。
中の餡は、蓮の実、 あずき、 ナッツ、 塩漬け卵黄など、さまざまな種類があり、近年ではアイス月餅やフルーツ風味など、新しい味わいも人気を集めています。

中秋節を象徴する名句として、北宋の文豪・蘇軾(1037〜1101)の詞*『水調歌頭』の結びが広く知られています。

* 詞:中国の宋代に盛んになった歌詞形式の詩歌。宋詞ともいう。

ここで使われている「嬋娟(せんけん)」は、本来「美しい姿」を意味する言葉ですが、この作品では「美しい月」の雅称として用いられています。そのため、「千里共嬋娟」には、「遠く離れていても、同じ美しい月を眺めることで心はつながっている」という願いが込められています。この一句は、中秋節になると中国で最もよく引用される言葉の一つです。

秋分が季節の移ろいを感じる節目であるのに対し、中秋の名月は満月を愛で、人と人とのつながりを大切にする文化を象徴しています。時期が近いため、混同されることもありますが、澄み切った秋空の下、実り豊かな大地と満ちゆく月をともに味わうことで、自然への感謝や人を思いやる心、そして日中両国に共通する美意識を、あらためて感じることができるでしょう。

日本と中国の間をつなぐ月といえば、遣唐使として派遣され、玄宗皇帝に仕えて活躍した阿倍仲麻呂が、 753年に帰国に際して明州(今の寧波)の宴席の場で詠んだ歌が有名です。

天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも

ところで、皆さんは日本と中国の 「月のうさぎ」 が、同じルーツを持つと考えられていることをご存じでしょうか。

もともと、 月の表面の模様を見て 「何かの姿に見える」 と想像したことから、 月とうさぎを結びつける文化が生まれました。中国では、月に住むうさぎ「玉兔(ぎょくと)」が、臼で不老不死の薬をついているとされています。 その伝説が日本にも伝わり、 日本では「うさぎが餅をついている」という姿として親しまれるようになりました。

さらに遡ると、インドの仏教説話にも月とうさぎにまつわる物語があるとされています。 こうした長い文化のつながりをたどってみると、私たちが眺める月は、 国や時代を越えて人々の想像力や美意識を育んできた存在であることがわかります。

読み物一覧へ

top
ページ