好時光・二十四節気
十月二十三日 霜降

十月二十三日
霜降(そうこう)

月落烏啼霜滿天
江楓漁火對愁眠
姑蘇城外寒山寺
夜半鐘聲到客船
(参考)
月落ち烏鳴きて霜天に満つ
江楓の漁火愁眠に対す
姑蘇城外の寒山寺
夜半の鐘声客船に到る
唐代の詩人・張継の代表作 『楓橋夜泊(ふうきょうやはく)』 です。
八世紀中頃、蘇州付近を旅していた際、詠まれたとされる七言絶句で、
中国でも日本でも非常によく知られています。
ここで、その孤独と寒さをそっと包み込んでくれるような1300年前の和歌をご紹介します。張継の『楓橋夜泊』とほぼ同時期に、遣唐使として命がけで海を渡る息子を案じる母親によって詠まれた一首です。
旅人の 宿りせむ野に 霜降らば
我が子羽 (は) ぐくめ 天 (あめ) の鶴群 (たづむら)
—— 遣唐使の母
『万葉集』巻9・1791
訳:旅人が野宿をする野原に霜が降りたら、そこにいる我が子を羽で包んでおくれ、空を渡る鶴たちよ。
霜降は秋の最後の節気です。例年10月23日~11月6日頃までの季節を指します。
実は、「霜」といっても空から降るのではなく、露が冷え込んで凍り、霜になります。
この頃になると、黄河流域では白い霜が見られるようになり、広大な大地は一面銀色に覆われます。
「霜が百草を枯らす」と言われるように、秋の作物は収穫を終え、木々は落葉し、虫たちも冬支度を始めます。
霜降の食養生
このように秋の冷え込みがいっそう深まる節気になると、「何を食べるか」が大事な話題となります。
🍲 鴨料理で秋の養生
中国には 「冬に栄養を補うより、 霜降の頃に補うほうがよい」 ということわざがあるように、 霜降の時期には、 羊肉鍋や羊の頭の煮込み、鴨のスープなどを食べる地域が多くあります。
なかでも鴨肉は、 秋の乾燥を和らげる食材として親しまれています。
中国各地には、北京ダック、南京塩水鴨、杭州の老鴨鍋をはじめ、鴨血春雨スープや麻辣鴨頸など、さまざまな鴨料理があります。
毛血旺 máo xuè wàng
四川の代表的な料理、鴨モツの麻辣煮込み。
溶け込んだ肉の濃厚な旨味、ぷるぷるコリコリの食感が絶品

🌱 大根を生で食べる
中国の山東地方には、「処暑にはコウリャン、白露には 粟(あわ)、 霜降には 大根を掘る(処暑高粱,白露谷,霜降到了抜蘿蔔)」 という農村のことわざがあります。 また、昔から「冬は大根、夏は生姜を食べれば医者いらず」という言い伝えもあり、大根は現代でも「畑の高麗人参」と呼ばれています。
10月末頃からは、生の大根が旬を迎えます。大根を生で食べることには、胃腸の働きを助けておなかの張りを和らげるほか、秋に弱りやすい「肺」をいたわり、せきを鎮める効果があるとされています。
🍅 柿を食べる

福建などの地域では、霜降の時期に柿を食べる習慣があります。また、霜降の日に柿を食べると、顔色が赤い柿のようにつややかになるという言い伝えや、この日に柿を食べないと冬に唇がひび割れるという説もあります。
柿だけでなく、この季節には多くの野菜や果物が特においしくなります。その理由のひとつが「霜に当たること」です。 草木や大地に霜が降りることを、中国では「打霜(dǎ shuāng)」といい、霜を受けた野菜や果物は甘みや風味が増します。白菜や大根、キャベツなどの冬野菜は、霜に当たると凍結を防ぐために糖分を蓄える性質があり、その結果、甘みが増して格別のおいしさになります。
干し柿――おいしくなあれ、おいしくなあれ
🍆なす(茄子)は霜に弱い
ただし、なすだけは例外です。
中国の慣用句には、「霜打的茄子(シュアン・ダー・ダ・チエズ shuāng dǎ de qiézi)」という表現があります。これは日本語の「青菜に塩」に近い意味を持ち、元気をなくしてしょんぼりする様子を表します。 夏野菜であるなすは寒さに弱く、秋の終わりに霜が降りると、水分が抜けて皮はシワシワ、茎や実もぐったりと垂れ下がり、 しなびてしまうからです。
霜降を迎え、 秋の恵みがますます深まるこの季節。日本にも、 きのこ、 さつまいも、 栗、 かぼちゃなど、 旬の食材を味わい、 季節に合わせて体を整える豊かな食の知恵があります。
今晩の食卓には、どんな一品が並ぶのでしょうか。