好時光・二十四節気
十一月七日 立冬

あっという間に冬がやってきました。

「立」とは始まり、「冬」とは終わり、万物が蓄えられる時期を意味します。

古来より、 立冬は人々にとって重要な節日とされ、 収穫を祝う祭りや宴が行われてきました。 古代中国では、 立冬の日に皇帝が 「迎冬」 の儀式を行い、 臣下に冬服を賜る習わしがありました。
民間では、 旧暦10月1日の寒衣節に、 亡くなった家族や先祖に紙で作った衣服を供えたり、燃やしたりして、あの世にいる先祖が寒さをしのげるよう祈りました。 そのため、寒衣節は「先祖を偲び、冬の無事を願う日」ともいえます。

また、日本では立冬といえば「こたつ開き」の時期でもあります。 江戸時代には、旧暦10月の「初亥(はつい)の日」にこたつを出す習わしがあり、「亥の月の亥の日に こたつ開きをすれば、火事を免れる」と信じられていました。ちなみに、今年の立冬は旧暦9月28日にあたります。

(参考)
凍れる筆、新詩を写(か)くに懶(ものう)く、
寒炉、美酒、時に温(あたた)む。
酔いて墨花を看れば月白く、
恍として疑うらくは、雪の前村に満つるかと。

寒い夜、炉端で酒を温めて暖を取りながら、白い月明かりを一面の雪に見立てる――そんな静かで幻想的な冬の情景が描かれています。

そして、立冬の頃に咲き始めるのが山茶花(さざんか)です。
山茶花は、冬の訪れを告げる花として日本でも親しまれています。中国で「山茶花」あるいは「山茶」と呼ばれるものは、日本でいうツバキ科の植物を指します。

ちょっと脱線しますが、テレサ・テン(鄧麗君)が歌う『山茶花』では、茶摘み娘の胸に芽生える、 甘酸っぱく初々しい初恋の情景が、軽やかなスローワルツのリズムに乗せて描かれています。実はこの曲、日本の演歌『みちづれ』を原曲とするカバー曲なのですが、中国語圏では、20世紀ポップスの名曲の一つとして、 今なお高く評価されており、多くのアーティストにもカバーされ続けています。

興味深いことに、オペラ『椿姫』(中国語では『茶花女』)もまた、椿の花を象徴として選んでいます。そこには、愛の純潔と情熱、そして美しいものが儚く散りゆく「薄命の美」への哀感が託されています。

山茶花は、俳句では冬の季語です。日本の俳人たちも、その可憐な花に冬の情緒を託してきました。

山茶花を雀のこぼす日和かな  正岡子規

――山茶花の枝に止まった雀が花を散らしている、穏やかな冬の日を詠んだ句です。

山茶花のこぼれつぐなり夜の雨  高浜虚子

――夜の雨に打たれ、山茶花の花が次々と散っていく様子を詠んでいます。

冷たい風が吹くと、思わず身を縮めたくなります。
そんな寒さの中、街角では甘栗がカラカラと音を立て、焼き芋からは温かな湯気が立ちのぼります。
両手で包み込めば、指先までじんわりと温まり、心までほっこりします。
そんな冬ならではの風景は、中国の多くの町で今も見られます。

調査によると、北京では氷点下になると焼き芋の売上が急増し、上海の甘栗店では1日に300キロもの栗が消費されるそうです。
南京の夫子廟(ふしびょう)商店街の調査では、甘栗店の前で買い物客が足を止める時間は平均2.3分、
焼き芋の屋台にいたっては、購入を決めるまでの時間は平均45秒であることが分かりました。

さて、今日のあなたの幸せは、栗の殻がパチンとはじける小気味よい音から生まれるでしょうか。
それとも、焼き芋の香ばしい皮をむいた瞬間に立ちのぼる、ほかほかの湯気からでしょうか。

あるいは、栗きんとんや芋ようかんを味わいながら、もう少しだけ、秋の余韻に浸るのもいいですね。

読み物一覧へ

top
ページ