書道の日中交流

 日中友好会館美術館は開館記念展として、中国第6回全国美術展受賞作品による「現代中国美術作品展」を1988年1月に開催している。5年に一度、全中国規模で開催される政府主催の公募展で、その受賞作品は現代の中国美術の最高の水準を示すものだった。私は共同通信の事業部門から出向していたが、会館ではこの企画を現在も継続して開催しており、中国の現代芸術の紹介に果たす意義は大きいと思っている。

 ところで、私は2019年11月24日に北京を訪れた。日中の代表的な現代書家それぞれ約30人の書を集めた「中日書法名家作品展」の日本側主催団体、全国書美術振興会の一員としての訪問だったが、私にとっては共同通信在職時に日中友好会館と共催した「秦の始皇帝と兵馬俑展」「よみがえる四川文明~三星堆と金沙遺跡の秘宝展」以来、14年ぶりの訪中となった。先進的にキャッシュレス時代に入り、スマホを駆使しなければタクシーにも乗れないし、食事もできないという、中国社会の変貌ぶりに驚く。中国側の主催団体は中国国家画院や中国国際文化交流センターなどで会場は中華世紀壇・世界芸術センター。日中友好会館では1992年に国交正常化20周年を記念して「日中代表書法家展」を開催しているが、その時以来の本格的な交流書展として取材も多く、話題を集めた。改めて日中の文化交流の中で書道の果たす役割の大きさに思いを致した。

中日書法名家作品展テープカット風景 2019年11月25日

            (写真提供:美術新聞社)

 これが11月下旬。それから1ヵ月経たないうちに新型コロナウイルス感染症のパンデミックが始まる。書家の交流は途絶え、この展覧会開催はギリギリの時期だったと感慨深いものがある。早い時期に感染症が収束し、中断している書道展はじめ文化交流事業の再開を切に願っている。

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