好時光・二十四節気
十月八日 寒露

十月八日
寒露(かんろ)
暦の上の「寒露」は、冷気によって露がいっそう冷たさを増し、どこか寒々しく感じられる季節の節目。
ほんのり白く色づき始めた「白露」の優しさから一転、秋の深まりとともに朝晩の空気はピリッと引き締まっていきます。

文人が愛した「北平」の秋:老舎の丹柿小院
こうした北京の秋は、 多くの芸術家や文化人を魅了してきました。
生涯を通じて北京を愛し、純粋な北京語で創作活動を続けた文学者・老舎(1899-1966年)は、「春は杭州に住み、夏は済南に住み、秋は北平に住むのがよい」と書き残すほど、当時の北平(現在の北京)の秋を愛しました。
故宮近くの静かな胡同に佇む 「丹柿小院」(現・老舎記念館)は、 彼が晩年の16年を過ごした四合院の終の棲家です。 1953年に植えられた二株の柿の木は、10月中下旬になると熟した果実を灯し、灰色の壁や青瓦と美しいコントラストを描きます。
中国語で 「柿(シー)」 が 「事(シー)」 と同音であることから、 この中庭は 「万事が心に叶う(事事如意)」 、 そして 「好事発生(良いことが起きる)」 という吉祥の願いに満ちた、 温かな祈りの景色を今に伝えています。
画魂を揺さぶる「音楽のような空」:梅原龍三郎の視点
また、 日本の洋画家・梅原龍三郎も北京の秋に魅せられた一人です。
1939年から1943年まで毎年北京を訪れた彼は、 1942年に代表作『北京秋天』(東京国立近代美術館所蔵)を制作しました。
澄み渡る秋空と、 紫禁城の朱や緑が織りなす鮮やかな色彩が印象的な作品です。
梅原はこの高く澄んだ北京の秋空を、 「何だか音楽をきいているような空だった」 という言葉で称えました。

見上げる空は気持ちのよい秋晴れ。北国からの渡り鳥である雁が南へ旅立ち、 凛と咲く菊の花が見頃を迎えるなど、本格的な秋の訪れを五感で実感できるすばらしい季節が、今年もやってきました。
秋の深まりを感じられるこの季節には、各地でさまざまな風習や楽しみがあります。
🍂 賞紅葉――紅葉狩り
「霜葉は二月の花よりも紅なり(霜葉紅於二月花)」という詩の一節があるように、この時期は紅葉が最も美しい季節です。
特に紅葉鑑賞に適しているのは中国北部、なかでも黄河以北の地域です。北京では、例年10月中旬から11月上旬にかけて紅葉の見頃となります。
🍂吃芝麻――胡麻を食べる
ごまは、古代の薬学書『神農本草経』や『本草綱目』にもその効能が高く評価されている食材です。 寒露の時期には、 ごまを使った食品が人気を集めます。 ごませんべい、ごま入り緑豆菓子、ごま焼餅(シャオビン)などが代表的です。
🍂喝菊花――菊花茶を楽しむ
菊は晩秋を代表する花で、寒さや霜が厳しくなるほど、いっそう鮮やかに咲きます。
また、寒露の頃は重陽節(ちょうようせつ)が近づくため、 一部の地域では 「菊花酒」 を飲む風習があります。そのことから、重陽節は 「菊花節」 とも呼ばれています。
菊花酒 だけでなく、クコの実 を加えた 菊花茶も、この季節ならではの飲み物として 親しまれています。
🍂秋釣辺――秋は岸辺で釣れ
揚子江の南、 江南地方では、 この時期になるとエビやカニを味わい、 釣りを楽しむ習慣があります。 寒露を迎えると 気温が急激に下がり、深場まで日差しが届かなくなるため、 魚は水温の高い浅瀬へ移動します。そのため、「秋は岸辺で釣れ(秋釣辺)」という言い伝えが生まれました。


浙江省の温州などでは、旬を迎えた脂ののったカニを味わうだけでなく、川ガニやワタリガニを酒や塩で漬け込んだ 「酔っ払いガニ」も名物です。米酒に漬けたり、塩水に漬けたりするほか、漬けたカニから濃厚なカニ味噌だけを取り出して保存し、 来客をもてなす際の珍味として振る舞う家庭もあります。